元日本テレビ・伝説のプロデューサーが振り返る、明石家さんまの“ありえない一言”とは？

2020年3月20日

　吉川氏は「ラジオの中で差し入れみたいなお菓子があるじゃないですか。で、それをネタにして（さんまが）『こんなもんくれてもしょうもないねん』って言って。『TBSは全自動麻雀機、フジテレビはアメリカ製の冷蔵庫。そうや、日本テレビも来とるから、日本テレビはプールを持って来ればええわ』って言ったんですよ。それで、僕は“プールかよ！”と思ったんだけど……」と、この時の率直な心境を思い返した。冗談交じりの指令を受けた吉川氏は「（ホームセンターチェーンの）『東急ハンズ』行って。アメリカ製の、子どもが、小学校6年生ぐらいが4人入れるデカいプールがあった。あれと、踏んで空気入れるやつを持って行って。（すると、さんまが）『日テレ、ホンマに持ってきよったな』みたいな感じで。そこから、なんかラジオの中で（自分たちのことを）触ってくれるようになって」と、次第に距離が縮まっていったとか。

　これがきっかけとなり、さんまとタレント・小堺一機が出演するコント番組『さんま・一機のイッチョカミでやんす』（1989年11月～1990年9月）が決定。放送開始に向けて、さんまは「じゃあ最初は、小堺と会った西麻布の店のセットを作って、そこで初めての“出会いコント”をしよう」とのアイデアを提案。「分かりました！」と張り切る番組スタッフは、モデルのお店の写真を撮り、800万円も費やしてセットを用意したのだった。ところが、「撮影初日が来て、照明もバッチリ決まって、（準レギュラーの）ラサール石井さんや、松尾伴内さんとかみんな入って来て。楽屋にさんまさんが入って来て、『最初どんな感じ？』って言うから、『店のセットがすでにできています』って言ったら、3秒ぐらい考えて『あれ、いらんわ……』って。それでもう収録は終わりですよ」と衝撃的なエピソードを話したため、スタジオは「えっ！？」と、騒然。

　吉川氏いわく、さんまがお笑いにストイックなあまり、「面白くない」と感じた瞬間に収録が中止に。800万円をかけたセットは、一瞬にして水の泡になってしまったそうだ。しかし、その後さんまから信頼を得た吉川氏は、1994年スタートの『恋のから騒ぎ』で仕事をともにし、プライベートで旅行に出かけるまでの仲になったという。最後に吉川氏が「そんなことは山ほど経験している」としみじみつぶやくと、名倉は「昔の方が“とんでもなく大変やった”と思う」と、当時の番組制作者たちの苦労に思いを馳せていた。

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