「ロス疑惑」などスクープを激写した元「フライデー」専属カメラマンが明かす「芸能人を隠し撮りするテクニック」とは？

2017年7月28日

　ここで、河本は「（小原氏が撮った）スクープいろいろあったんですが、皆さんにいろいろ見ていただきたい」と話し、ロス疑惑の中心人物とされた男性の逮捕直後の姿が掲載された誌面（「フライデー」85年9月27日号）を紹介。「潤さん、分かりますね？」（河本）との言葉に、名倉は「はい」と答え、華原も「こちらの写真、ロス疑惑」（河本）と聞き、「あぁ！　あれだ！」と、ピンと来たようだ。疑惑が取り沙汰されていた男性は、当初はロサンゼルスで銃撃事件に遭い、“妻を失った夫”として同情的に報じるメディアが多かったのだが、ある週刊誌に「保険金をかけた殺人事件の疑いがある」（84年）という記事が出ると、報道情勢が一変。一気に夫の犯行を疑う報道が飛び交う事態となり、夫は85年に警視庁に逮捕された。

　この事件について、小原氏が「（夫は）東急ホテルの駐車場で逮捕されたんですが、逮捕後の○○さん（夫の名前）の表情を撮ったのは私1人なんです」と口にすると、スタジオは騒然。河本が「なんで撮れたんですか？」と問いかけたところ、小原氏は「カメラマンが山のようにいたんですが、全部のカメラマンは（警察が乗り込んでいく）車の前から○○さんの表情を撮ってたんです。（しかし）私が撮らなくちゃいけないのは、『全部のカメラマンの中で1番いい写真を撮って来い』っていう、そういう役割を持ってましたので。なので“絶対に撮らなくちゃいけないのは逮捕後だ”と（思った）」と、当時の状況や心境を振り返った。

　多くのカメラマンが夫の逮捕直前の表情を狙っていた中、小原氏だけが車の後方に行き、夫が警察に連行される瞬間を待っていたそう。「もし刑事さんが（夫を）私の方向に引き出したら、私が“1番いいところにいる”っていうところを陣取って」と、ある意味“賭け”に出ていたというが、「それが当たって、バシッと撮れて」（小原氏）と、決定的瞬間の撮影に成功。ほかのカメラマンはいなかったとはいえ、小原氏の前には「刑事さんが団子（状態）になってた」とのこと。小原氏は「不思議なもので、人間って後ろから『危ない、危ない！』ってやられると、パッと退くんですね」と、撮影ポイントができるよう仕向けたとか。

　その一瞬の隙をついて、逮捕直後の夫の表情を正面から捉えたものの、「この後、刑事さんが怒って私をボーンと突き飛ばすんですね」（小原氏）と、警察の怒りを買ってしまったそうだが、名倉が「でも、仕事した（写真撮れた）から、もうええんや？」と聞くと、「はい」と、頷いていた。こうして夫は1度は逮捕されるも、2003年には「証拠不十分」のため、銃撃事件の日本における無罪が確定。しかし、08年にロサンゼルス市警が妻の殺害容疑で夫を逮捕。カリフォルニア州には時効がなく、新しい証拠の入手を受け、ロス市警が逮捕に踏み切ったと報じられた。本人は容疑を否認したまま、裁判の前に自殺してしまい、法廷で真相が明かされないうちに事件は終息を迎えた。

　そんな日本中のマスコミがこぞって報じたロス疑惑だが、これを機に「フライデー」の編集方針が変わったという。小原氏は「○○さんの逮捕以降に、ネタがなくなっちゃったんです。あんな“ものスゴいキャラクター”といいますか、事件といいますか。毎週、毎週話題があった人がいなくなっちゃって、『今度は何を撮ったらいい？』って（ネタが）なくなっちゃったんですね」と話し、「編集部も（雑誌は）出さなくちゃいけないから、芸能スキャンダル（中心）に変わった」と、説明。その結果、報道のエースカメラマンだった小原氏も、芸能ネタを追う現場に駆り出されるようになったそうだ。

　ここで、華原は「芸能人の方の写真撮る時って、私たち（芸能人サイド）から見て“どの辺を注意したらいい”とかってあるんですか？」と、質問。これに対し、小原氏は「まず、バレるようなところでカメラを構えているのはド素人」と前置きした上で、「芸能人になったつもりで（撮影できそうな場所を）探して、そこにはカメラマンはいないです」と、断言。また、河本が「我々が思ったところにはいるワケがない？」と聞き返した際には「ないです。そこにあるのはゴミ箱だったり、宅配便のバイクだったり（するだけで）カメラマンはいないですね」（小原氏）と、回答した。

　名倉が「え？　（カメラマンはいないけど）カメラを回してるってこと？」と確認すると、小原氏は「カメラを（ゴミ箱やバイクなどに）仕掛けてます」と、暴露。隠し撮りの手口を知った華原は「そうなんだ！」と、衝撃を受けた様子だった。さらに、小原氏は「遠隔（操作）で撮れるようになってます」と補足し、仕掛けたカメラの映像を電波で飛ばして、現場から離れた場所でシャッターを切っていた模様。こうして、さまざまな手法を駆使して激写した芸能スキャンダルが誌面のほとんどを占め、スクープ連発の「フライデー」のカメラマンは、当時とてももてはやされていたとか。

　ところが、一夜にしてその評価が一変する事件が勃発。小原氏は「たけしさん（お笑いタレント・ビートたけし）の襲撃事件ですね」と、1986年に「『フライデー』側の行き過ぎた取材に抗議する」といった名目で、たけし軍団が編集部に乗り込んだ「フライデー襲撃事件」が、同誌の評判を覆したと回顧。「それまで『フライデー』って雑誌は、日本で1番売れてる……180万部売れてる雑誌で、女子大生が電車の中で見ていたような時代でした」との言葉に、「え～！」と驚く共演者たち。続けて、小原氏は「（事件後は）“日本一酷い人たち”に（評価が）変わりましたね。一晩を境に」と、語った。

　河本が「英雄だった人たちが、一気にこの、やっぱり……」と、騒動の影響を想像する横で、名倉は「なんで（『フライデー』は）芸能に……。（もともと）硬派な集団が、芸能に振るんですか」と、路線が変わってしまった点を残念がったが、小原氏は「（雑誌を）売るしかないからなんでしょうね」「何を（記事で）出したかで、部数とか読者アンケートとかで、何が人気だとか数字出てますから、確実なのは芸能（ネタ）みたいな（ところがあった）」と、コメント。しかし、同氏は「もちろん撮られた方はスゴいダメージ受けますが、撮ってる方も“人を傷つけた”っていうことで、負い目がある」と、本音を吐露。

　この発言に対し、撮られる側のMC陣は「だって（スクープ写真で）人生終わらす人もいるんですもんね」（名倉）、「何人も終わってる人もいるワケですからね、実際に」（河本）などと、スクープがその後の人生に関わる可能性に言及した。そして、そんな芸能人のスキャンダルや、人の悲しみを伝えることに疲れ切ってしまった小原氏は「フライデー」を離れた現在、動物写真家として活動。意外な転身ぶりに、名倉が「カワイイな！」とツッコミを入れ、「今は（動物に）癒されてるでしょ？　傷つきませんもんね、お互いに」（河本）と聞かれた時には「少なくとも、撮っても文句言ってこないですから」（小原氏）と述べ、穏やかな表情を見せていた。

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